No12  宝    物

(2005年3月/母I)

卵ダメ牛乳ダメ大豆ダメ。息子は小さいころからアレルギーがあり、食事制 限のため食べられる物がないような子供でした。 小学校3年の時、息子が初めて野球チームに入りたいと言ったときも、私たちは健康上の理由から反対しま した。 炎天下の練習で湿疹がひどくなりはしないか、体力的についていけない のでは、と心配だったからです。
けれども息子の強い希望で入部しました。以後4年間、喘息で1ヶ月休むこ とはありましたが、1年1年と体力もつき、 あの時の心配がうそのように感じ られる今を大変幸せに思います。

それに加えて喜びだったことは、体だけでなく心も鍛えて頂いたことです。 息子は私に似て(?)気が小さく、 ミスをするとそのことが忘れられず、後を引くタイプです。試合中、息子がエラーの後何度もグローブを叩く仕草や、 胸 を押え深呼吸する姿は緊張の証(あかし)、見ているこちらまでドキドキして しまいます。
6年のFCC大会準決勝戦でもそうでした。イージーフライを落球し、その後 のバッターボックスでスクイズのサインを見逃して チャンスを活かせなかった 時も、息子の心臓の音が私の耳元で聞こえるような気がしました。おまけに目まで真っ赤です。 こうなるといけません。いつもの負けるパターンかと思いましたが、その後が違っていました。バッターボックスに立った息子の 後ろ姿に、何やら気迫のようなものが感じられたのです。「どうしても打ちたい。打って やる!」チームのみんなにかけた迷惑を 挽回したかったのでしょう。息子は粘った末に打ち、チームの勝利に貢献することができました。

心身ともに弱々しかった息子に(今だってお世辞にもたくましいとは言えま せんが)、野球は多くの恵みをもたらしてくれました。 そしてこれは野球という団体スポーツのおもしろさもさることながら、監督・コーチ皆様のご指導の 賜物と心より感謝しております。 寒い日も暑い日も飲み過ぎた、いえ仕事で疲れた翌日であっても、熱心にご指導下さり、共に過ごした時間は息子の一生の 「宝物」です。ありがとうございました。


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